インタビュー:インフォグラフィックスの世界

インフォグラフィックス2013.6.27 23:07

徳間貴志氏(bowlgraphics)「データのビジュアル化は共通命題」

 複雑なデータを分かりやすく画像で表現するインフォグラフィックス。ビッグデータ時代を迎え、企業や行政機関などにおいては「データの可視化」が命題となっている。インフォグラフィックスの分野において、数多くの作品を発表している徳間貴志氏(bowlgraphics)は注目の一人だ。徳間氏にインフォグラフィックスの現在と、今後の可能性について聞いてみた。

 徳間氏は2012年3月、1959年から2050年までの「日本の人口推移」を表現した作品で経済産業省の「ツタグラ賞」を受賞。国内外の雑誌やWebメディア、企業広告の分野などで幅広く活動を展開しながら、世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」のインフォグラフィックス専用サイト(トリップグラフィックス)にも定期的に作品を発表している。

インタビューの内容は以下の通り。

―なぜ今、インフォグラフィックスが注目されるのか?

 最も大きなきっかけは2011年の東日本大震災。当時は誰もが地震情報、津波情報、被災者情報、そして原発事故による放射能に関する情報を欲していました。特に放射能情報は、当時の東京電力と政府の対応に誰もが懐疑的な目を向け、本当の情報を求め右往左往したように思えます。このような状況下、皆が信頼できる情報を強く欲したことにより、多くのデザイナー・クリエイター・メディアが電力使用率情報や被災時対応マニュアルなどのグラフィックスを独自で作成しウェブ上で公開していきました。

 多くの情報、複雑な情報を分かりやすくまとめる事において、インフォグラフィックスは有効な手段のひとつです。もともと新聞や雑誌などでは昔からある手法なのですが、あらためて注目を浴びたと思います。

 さらに震災時にFacebookやTwitterなどのSNSが、広く普及したことも影響があります。特に静的な一枚絵のインフォグラフィックスは、SNSでシェアされるケースが多いようです。

 また、海外においては企業PRやブランディング向上などにも効果があると言われ、広く普及しています。ようやく、日本にもその波が入ってきたように感じています。

徳間貴志氏(bowlgraphics)

徳間貴志氏(bowlgraphics)

―インフォグラフィックスを活用するメリットは?

 実は、インフォグラフィックスだけで本質まですべて理解させることは難しいのですが、なんとなく理解できたり、なんだか更に知りたくなるような気持ちにさせる力があります。最近は企業側からも、大塚製薬「カロリーメイト」や三菱自動車などの商品紹介ページなどで個性的なインフォグラフィックスが発信されてきています。あいなまいな文章でぼやかすのではなく、裏付けのある数字やデータを明確に打ち出しながら、ビジュアルの力で見る人を惹きつけて興味や理解を促しています。

 インフォグラフィックスというアプローチにより、従来なら複雑な情報に触れてもらえなかった人々を惹きつけることができるのです。

 日本の企業や行政機関は、広報発表で単純に数値などを垂れ流しするのではなく、もっと相手に理解してもらうためにデータの視覚化を進めるべきです。どの企業も今後、情報の出し方において、インフォグラフィックス的なアプローチ、データの視覚化は共通命題となっています。企業のブランドイメージアップはもちろん、投資家への広報活動(IR)にも効果的なアプローチになりつつあります。

―事例:受賞作品「日本の人口推移〈1950〜2050〉」について

 この作品はスマートフォンやタブレットで触りながら見られる「動くインフォグラフィックス」として制作しました。SNSを通じて拡散され、昨年の発表時は、1日平均で10万人以上の閲覧があり、Facebookでは1日で1万「いいね!」、1週間で約2万「いいね!」を超えました。

 2050年までに予測される日本の人口減少、少子高齢化を示すデータなのですが、そのことにはほとんど言及せずに、淡々と1950年代から2050年までの人口ピラミッドを操作させるインフォグラフィックスに仕上げ、あえて余計なストーリーを盛り込まない手法をとりました。

 受け手が自分の生まれた時代から「自分事」としてデータに触れることができるので、SNSで拡散しやすかったのでしょう。自分の意見を加えることができるSNSと、インフォグラフィックはすごく相性が良いです。SNS上では、ネガティブな情報が拡散しやすいですが、データに基づいて制作されるインフォグラフィックスは、拡散の仕方がポジティブな傾向があります。ひとりひとりが物事や社会のことを、より「自分事」として捉えてもらうように仕向けることが重要です。

徳間貴志(Takashi TOKUMA)/bowlgraphics

2002年「bowlgraphics」設立。インフォメーション グラフィックスを中心に、印刷・WEB・プロダクトと様々なデザインワークを手がける。経済産業省ツタグラ・プロジェクト(2013年度):アドバイザリーボード。

コメント